『少女は自転車にのって』を見た
・岩波ホールにて映画『少女は自転車にのって』を鑑賞。
とても良い映画だった。子供が自転車に乗ってる映画に駄作なし。
サウジアラビア初の女性監督が制作した作品らしい。
おてんばな10歳の女の子が自転車ほしさに小遣い稼ぎに奮闘するという一見他愛もない内容なのだが、もちろんそれだけの話ではない。
なにせサウジアラビアはバリバリのイスラム圏。ムスリムの女性は家族以外の男には肌を見せてはいけないし、笑い声や歌声も聞かれては駄目、車の運転もしちゃ駄目だからママは仕事場まで通うのに運転手を雇わなくちゃならない。男にはない、様々な制約の中で生活している。
主人公にしたって子供だからこそやんちゃを許されているものの、学校では毎日のように厳しく注意されている。
女の子が自転車に乗るなんて、イスラム教では非常識なのだ。
でも、そんなムスリム女性の息苦しい日常を描いたドラマでありながら、この映画にはどんよりとしたシリアスを感じさせない天真爛漫さにあふれていた。
なんてったって主人公のワジデちゃん、全身をすっぽり隠す黒装束の下にジーパンとコンバースを履いて、ラジオでかかるポップソングをカセットテープ（！）に録音してミックステープを作っちゃうような洒落た女の子。規律が大切なことは理解できるけど、やはり好奇心は止められない。
ワジデが時に真面目に時に小ずるく自転車の代金を捻出しようと四苦八苦する様は、なんとも痛快だった。
最終的な人間ドラマもジェンダーの問題ではなく、シンプルな家族愛や恋愛の話に落ち着く良いお話でした。
見終わった後に知ったんだけど、サウジアラビアにはなんと映画館がないらしい。 法律で禁止されているそうなのだ。だもんで、この映画も本国では当然未公開。撮影もコソコソと行われ、バレて注意される前に撤収するというゲリラスタイルだったらしい。
ただでさえ女性の監督、いろいろな苦労の末にできた映画だそうですよ。
様々な制約がある厳しい状況の中で、女性の監督さんが少女を主役にしたポジティブな映画を作った、そのこと自体にも感動がある。
