『アメリカン・ハッスル』を見た

・MOVIXさいたまにて映画『アメリカン・ハッスル』を鑑賞。

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面白かった。『スリー・キングス』、『世界にひとつのプレイブック』のデヴィッド・O・ラッセル監督作品。世界にひとつのプレイブック』よりずっと良かったな。

小ずるい詐欺を続けてきた主人公とその愛人のコンビがFBIに捕まり、保釈と引き換えに汚職政治家の捜査に協力するというクライム・コメディ。

なんだか三谷幸喜のようである。人情喜劇だ。途中でマーティン・スコセッシ映画のようにもなるけど一瞬だけ。詐欺師、FBI捜査官、政治家、それぞれの登場人物がスコセッシ映画の主人公のような栄光と挫折の人間ドラマを一瞬だけ抱える。でも所詮凡人だから凡人ゆえにドラマティックな生き方なんて長く続かない。小ずるい詐欺なんてちょっとした失敗ですぐバレちゃうし、野心に溺れたFBI捜査官が身の丈に合わない仕事をしても綻びだらけになるし、お人好しな政治家がどんなに市民のためにと理想を掲げたところで簡単に悪人に利用されてしまう。特別にはなれない人間たちが特別になるために互いを利用し足を引っ張り合い、結局自分のスケールに準じたそれなりな結末を迎える。それがしょうもなくて可笑しいし、たまらなく切ない。

途中で出てくるロバート・デ・ニーロが強烈だった。それまで上手いように計画が進んでいたのにデ・ニーロが出てきたところで即、暗雲が立ちこめる。彼のような特別な物語の主役にはなれないのだ、とみんなが思い知らされてしまう。エグい演出だった。


映画『アメリカン・ハッスル』予告編 - YouTube

実在の事件を元にしているらしく、主役のクリスチャン・ベールも実在の当事者に直接会って演技の参考にしたらしい。冒頭、メタボでハゲの中年詐欺師として 出てくる彼にまず驚く。ええ、これがあのバットマンかよ。演技派俳優たちが普段とは一味違う意外な芝居を見せてくれた。お見事。

 

・続けてMOVIX埼玉でヒッチコックの『めまい』を鑑賞。

スクリーン・ビューティーズ」という特集でヒッチコックの『泥棒成金』、『めまい』、『マーニー』の3作品をデジタル・リマスターで復刻上映しているらしい。

ヒッチコックといえば日本では『サイコ』が飛び抜けて知名度がある印象だけど、ファンの中ではこの『めまい』も『サイコ』と並ぶほどの人気らしい。未見だったのでせっかくの機会と思い見てみた。

なかなかに凄まじい内容だったなあ。いくつものレイヤーが重なったマルチジャンルな映画だ。ホラーっぽい話なのかと思ったらサスペンスで、ラブロマンスになったかと思えばまたミステリーになり、結局はサイコホラーっぽい後味の悪さで終わったりする。これが評価されるのもわかるよ。お話が複雑なわけでも抽象的なわけでもないのに、見方によっていくつもの解釈ができる。見終わった後、違和感ばかりが残ってしまい考えこんでしまった。なかなかこういう不穏な映画にはお目にかかれない。


【予告】めまい - YouTube

デジタル・リマスターというだけあってかなり綺麗な映像だった。鮮やかな色彩、粒立った輪郭。シーンによっては、50年前の映画だということを忘れるくらい美しい画があった。