『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を見た
・池袋新文芸坐にて、チャールズ・チャップリンの映画『犬の生活』、『キッド』、『街の灯』を鑑賞。
今週金曜日までチャップリン特集をやっているらしいので行ってきた。チャップリンなんて劇場で見るのは初めてで、この日に上映していた3作とも初見。社会風刺などが控え目の感動系の3本だ。
『犬の生活』は1918年作、ずいぶんと初期の作品、いやー約100年前ですよ。みんな大好き、ワンコが出てくるハートフルコメディ。今も昔も動物映画が人気なのは変わりねえのな。これが本当によく出来てる映画で、後の傑作に勝るとも劣らないクオリティ。むしろ1シーン1シーンのスラップスティックのセンスは最高水準なんじゃないだろうか、とにかくあれこれ楽しませようと練りに練られたアイディアが秀逸。冒頭の、地面にゴロゴロと転がって警官をかわすシーンからもうグイグイ貪欲に笑いをとっていく。チャップリンの相棒となる犬も芸達者で、人間が中に入ってんじゃねえかって思うくらい息が合った良い芝居をする。そして、じんわりと感動させてくれるハッピーエンドに、いやマジ、100年後の日本人まで感動させられるもん作れるって本当にすげえなって思います。100年ですよ100年。
『キッド』はご存知、初期の代表作。反則的に面白かった。チャップリンが捨て子を拾って親子生活をしていくという、今だったからベタすぎて企画にもなんないストーリーなんだけど、まあこれ何が反則って子役の子が本当に可愛い。さすがロリコンと名高いチャップリンさぁぁーん、捨て子の子だけでなく、近所の子供たちもボーイをやってる黒人の少年もみんな愛らしい!
「夢の国」パートで悪魔に騙された少女に誘惑されるっていう結構あからさまにインモラルなシークエンスがあるわけなんだけど、あれって何を意図したものなのだろうか。っていうか「夢の国」のパート自体がよくわからないのよね、なぜクライマックスであれをやるのか。全体的にシンプルでわかりやすい話なんだけど、ところどころ、「夢の国」とか、あと十字架を抱えたキリストのカットとか、解釈に困る部分がある。どういうことなんだろう。
『街の灯』。傑作だ。盲目の美少女ものである。全ての盲目美少女もののベースとなっている映画なのだろう。非常によく出来たプロットで、90分と比較的長編だけど全く飽きさせない。無声映画だということを忘れるくらい雄弁に詩情があふれている。
なんといっても、かの有名なラストシーンの素晴らしさには平伏すほど胸を打たれた。最後のやりとり。恐ろしくミニマムな、人間ドラマの純粋結晶。
「あなたですか?」
「…見えるの?」
「(微笑み)ええ。見えます」
これよ。美しすぎる。そしてこの時のチャーリーの子供のような表情! 気まずそうな、嬉しそうな、恥ずかしそうな、泣いてしまいそうないろいろ感情が入り混じった表情! ここかー、この顔ってこういう流れのあれっだったのかー。最高じゃないですか、それまでの約90分間はこのラストシーンのための前振りですよ! それくらいのレベルですので皆さん、機会がございましたら劇場でご覧になってくださいチャップリンのあの顔のドアップを。
そうは言ってもラストシーン以外ももちろん秀逸でして、これ感動系の話だけどコメディ部分も最高で。特にね、ボクシングのシーンが本当に面白いのな、チャップリン映画随一のギャグシーンって言われてるみたいだけど、子供みたいに笑ってしまったわ。チャップリン、レフェリー、対戦相手がまるでワルツを踊っているかのステップを踏む動き。これは高度だ。永遠に続いてほしいとさえ思った。つべにあったから貼る。
Charlie Chaplin - Le Luci della Città - Boxer II - YouTube
ここもう一度劇場で見たい。劇場中沸いていた。前述の2作ではクスリ笑いはあっても、声を上げて笑ったりはしてなかったからみんな。
・TOHOシネマズ西新井にて『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を鑑賞。
レオナルド・ディカプリオとジョナ・ヒルのハイテンション芝居の映画だった。
本年度のアカデミー賞にノミネートされているマーティン・スコセッシ監督最新作。ディカプリオ×スコセッシ5度目のタッグ。
なんと中身のない映画だろうか! 金儲けとドラックとセックスを中毒的に消費する男とその周辺の狂騒を描いただけの180分。さすがに3時間は長いよ! もう作り手もテンション上がっちゃって結局3時間になっちゃいましたテヘッみたいな躁状態。とても70過ぎのじいさんが演出してるとは思えないエネルギッシュなシーンばかり。
主演のディカプリオとその相棒役のジョナ・ヒルのパワフルなラリパッパ演技(たぶんかなりアドリブ多め)で3時間もたせているようなもんなんだけど、たぶんスコセッシも2人の芝居に影響されてここまでアゲアゲな映画を作ってしまったんじゃないかなあ。スコセッシ・チルドレンであるところのデヴィッド・フィンチャーやクエンティン・タランティーノを思わせるようなモダンな演出がところどころにチラついてて、じいさんの柔軟な創造性に感服いたしました。
映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』予告編 - YouTube
それでは最後に、再度のコンビ出演映画の製作が決定したというジョナ・ヒル&レオナルド・ディカプリオによる映画漫才を御覧ください。